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超音波が明らかにした筋膜の視点:皮下組織と筋肉の「独立運動」

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 体の深部、特に筋膜がどのように動いているかを想像することは決して簡単ではありませんでした。   超音波エコーを用いた最新の研究によって、筋膜の新たな側面について明らかになっている研究がありました。 筋膜リリースの評価  長年、筋膜リリースは経験則や感覚に頼る部分がありました。  過去のブログで挙げたように、近年、超音波検査技術の進歩により、筋膜の動きをリアルタイムで可視化できるようになっています。  今回紹介する研究では、超音波エコーを用いて、腰部の皮下組織と多裂筋(腰部の深い筋肉)の動きを詳細に分析しました。 新たな視点:独立して動く皮下組織と筋肉  この研究によると、超音波画像によって、皮下組織と多裂筋が、必ずしも一体となって動いているわけではないことが示されています。  特に、特定の介入(例えば、ローラーマッサージ)を行うと、皮下組織と多裂筋の動きがより独立して動くようになることが確認されました。   これは、組織間の滑走が改善され、筋膜の非運動性が軽減されたことを示唆しています。  つまり、組織の独立した動きがない=組織間の滑走がないということは、動きが悪くなっているという理解ができますね。両者の動きが独立することが、より良い状態であることが示唆されています。 独立した動きがもたらす効果  皮下組織と筋肉が独立して動くようになることで、何が変わるのでしょうか? 研究では、腰部の柔軟性や体幹筋力の向上といった効果が確認されています。  これは、筋膜の滑走性の向上によって、筋肉がより効率的に機能できるようになったためと考えられます。 図:下記論文から引用  超音波検査技術の進歩によって、私たちは筋膜の動きをより深く理解できるようになりました。  エコーの見方として、皮下組織と筋肉の「独立した動き」という視点を取り入れることで、筋膜リリースの効果を正しく判定することができそうですね。 引用文献: Nakai Y, Oe K, Matsuno R, Kiyama R, Kawada M, Takeshita Y, Miyazaki T, Araki S. Effect of Self-Myofascial Release of the Lower Back on Myofascial Gliding, Lumbar Flexibility, and Abd...

骨粗鬆症と体幹筋の関係性:超音波検査による新たな知見

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 高齢化社会において増加の一途を辿る骨粗鬆症。  骨の痛みや骨折のリスクを高めるこの病気に対し、新たな視点が示された論文を紹介します。  この研究では、超音波検査を用いて、骨粗鬆症の女性における体幹の筋肉の状態を詳しく調べておりました。 研究方法:  20 代から 80 代までの女性 91 名を対象に、超音波検査で腰部と腹部の筋肉を調べました。参加者は、20 代の健康な女性(対照群)と、50 代、60 代、70 代以上の骨粗鬆症患者(3 つのグループに分けられました)に分けられました。 研究結果:  骨粗鬆症患者では、健康な女性と比べて、体幹筋の厚さが薄く、エコー強度が高くなっていました。エコー強度が高いということは、脂肪が筋肉に浸潤している可能性を示唆しています。  骨粗鬆症患者のグループ間では、年齢が高いほどコア筋の厚さが薄くなっていました。  超音波画像では、健康な女性の筋肉はふっくらとしていましたが、骨粗鬆症患者では筋肉が痩せて見え、エコー強度が高く、筋肉と筋膜の境界が不明瞭になっていました。  腹直筋や腹横筋では、波状の線状エコーが見られ、筋肉の緊張が低下していることも分かりました。 この研究が示唆すること:  この研究は、骨粗鬆症の女性では体幹筋の質が低下しており、超音波検査でその状態を評価できることを示しています。重力が筋肉を通して骨に伝達されることで、骨を刺激し、骨形成を促進すると考えられていることから、体幹筋の強化は、骨粗鬆症の予防や治療に重要な役割を果たす可能性があります。    とても興味深い研究ですね。当店においても、体幹筋である腹横筋の強化がどのような効果をもたらすのか、 心身の観点から検証しております 。 骨粗鬆症患者の体幹筋エコー画像(下記論文から引用) 引用文献: Luo Y, Yue W, Li Z, Chen L, Wang P, Sun K. An initial study of core muscles using ultrasound in postmenopausal women with osteoporosis. Ann Palliat Med. 2022 Apr;11(4):1482-1490. doi: 10.21037/apm-22-314. PMID: 35523756.

論文掲載のお知らせ!The new potential and prospects of leisure activities of older adults individuals during the COVID-19 pandemic in Japan on health-span: From the perspective of a scoping review

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 この度、当店スタッフが執筆した論文「The new potential and prospects of leisure activities of older adults individuals during the COVID-19 pandemic in Japan on health-span: From the perspective of a scoping review」(邦題:COVID-19 パンデミック下における日本の高齢者の余暇活動と健康寿命:スコ-ピングレビュ-による考察)が、Studies in Science and Technologyに掲載されました!  高齢化社会が進む中、健康寿命の延伸は重要な課題となっています。本論文では、COVID-19 パンデミックによる社会距離化が、75 歳以上の高齢者の余暇活動にどのような変化をもたらしたかについて、スコピングレビューを用いて分析したものになります。  研究の結果、社会距離化の影響を受けにくかった余暇活動として、ゲーム、体操、スマートフォン等を用いたビデオ通話、メールなどが挙げられました。これらの活動は、デジタル技術といった新たな生活様式の一部となり、より多くの高齢者の健康増進に繋がる可能性が示唆されています。  さらに、本論文では、COVID-19 パンデミック下における高齢者の余暇活動に関する研究の不足や、高齢者の属性を考慮した分析の重要性も指摘しています。  まだまだ課題は山積みではありますが、この研究成果は、高齢者向けの健康度の指標となりうる、重要な知見です。  引き続き今後の研究活動にもご期待ください。 論文URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/sst/13/2/13_115/_article/-char/ja

レモン水の効能について

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  最近、スーパーでは有機栽培のレモンから抽出したレモン汁が販売されるようになり、価格も手頃なものが増えています。  以下には、レモン汁に期待される効能について述べられています。 ビタミンCの補給: レモンには豊富なビタミンCが含まれています。ビタミンCは免疫機能のサポートや抗酸化作用があり、風邪の予防や健康な肌を維持するのに役立つとされています。 代謝の活性化: ビタミンCやクエン酸、ポリフェノールなどが含まれており、これらが代謝を活性化させる助けになるとされています。特にクエン酸は体内の酸化ストレスを軽減し、新陳代謝を促進する役割があります。 消化の改善: レモン水に含まれる酸が、消化酵素の分泌を促進し、消化を助ける可能性があります。また、レモンの風味が食欲を刺激し、食事の前に摂取することで食欲増進に寄与するとされています。 デトックス効果: クエン酸が肝臓のデトックスプロセスをサポートするとされ、レモン水は身体の浄化や不要物質の排出を助ける可能性があります。 皮膚の健康: ビタミンCはコラーゲンの生成を促進し、皮膚の健康や美容に寄与するとされています。レモン水の摂取が健康的な肌を維持するのに役立つとされています。 アルカリ性のバランス: レモンは酸味がありますが、体内に摂取されるとアルカリ性の影響をもたらすとされています。アルカリ性のバランスを整え、酸化ストレスを軽減する可能性があります。  以上の点から、レモン水には様々な効果があり、特にアンチエイジングや免疫の強化が期待されそうです。  人によっては、胃に合わない方もいると言われていますので、そのような方は空腹を避け、食後に摂取するとよいかもしれません。   しかし、どの食材もそうですが、たくさん摂取したら良いというものではなく、あくまでもバランスの良い食事に心がけることが大切だと言われています。

当店スタッフが執筆した書籍が出版されました。

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  この度、 『わが国におけるポリヴェーガル理論の臨床応用』(花丘ちぐさ編著、岩崎学術出版社) の執筆に当店スタッフが協力させていただきました。  ポリヴェーガル理論は、神経科学者 Stephen Porges によって提唱された自律神経系に関する理論です。  自律神経系は、心臓や肺などの内臓器官の制御や体内の恒常性維持において重要な役割を果たしており、その働きは主に無意識に行われます。  ポリヴェーガル理論は、この自律神経系の働きを詳細に解明し、社会的な行動や情動にも深く関与することを示唆しています。  この理論では、自律神経系を以下の 3 つの主要な部分に分類し、それらのバランスが重要であると捉えています。 背側迷走神経(Dorsal Vagus Nerve):  この神経系が優位な状態は、「シャットダウン」や「凍りつく」反応と関連付けられています。 安全ではないと感じる状況下で、心拍数や呼吸数が低下し、無力感や圧倒感、身動きが取れない状態に陥ることがあります。 引きこもりや、慢性的なストレスによるバーンアウト(燃え尽き症候群)といった状態も、背側迷走神経の優位と関連していると考えられています。 腹側迷走神経(Ventral Vagus Nerve):  これは「安全・社会的接続」の状態に関連付けられ、リラックスや安心感、社会的つながりを促進します。 穏やかな心拍数や呼吸数、穏やかな表情、他者との良好なコミュニケーションなどが、腹側迷走神経優位の状態を示す指標となります。 信頼関係の構築や、積極的な社会参加に重要な役割を果たします。例えば、友人と楽しく会話している時や、自然の中でリラックスしている時などは、腹側迷走神経が優位になっている状態と言えるのかもしれません。 交感神経(Sympathetic Nervous System):  これは「戦うか逃げるか」反応として知られる、ストレス反応に関与する神経系です。 危険やストレスを感じた際に、心拍数や血圧が上昇し、身体が活動状態になります。 これは生存に不可欠な反応ですが、慢性的に交感神経が優位な状態が続くと、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。  ポリヴェーガル理論では、これらの3つの神経系のバランスが重要であり、状況に応じてどの神経系が優位になるかが行動や感情に影響を与えると考えられています。  医...

良好な睡眠が腰痛や関節痛などの痛みを緩和する?!

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 早寝早起きは健康的な生活習慣の一つとして知られています。一般に早寝がもたらす健康効果について述べてみたいと思います。 免疫力の向上  睡眠は、免疫細胞の活性化や増殖を促進する役割があります。十分な睡眠を取ることで、免疫力を向上させ、病気にかかりにくくなると言われています。 心身の緩和  睡眠不足は、ストレスや不安感を増加させることが知られています。深い眠りに入ることで、身体や脳が疲れを回復し、ストレスや不安の改善が期待されます。 集中力や記憶力の向上  睡眠不足は、集中力や記憶力の低下につながることが知られています。十分な睡眠を取ることで、脳の働きが良くなり、より効率的な思考や記憶ができるようになります。最近では、認知症になるリスクとして睡眠不足が挙げられています。 体重管理  睡眠不足は、食欲を刺激するホルモンの分泌を促進するため、過食につながることがあるようです。早寝早起きをすることで、適切な時間に食事を摂取すれば、体重の管理にも良い影響を与える可能性があるかもしれません。  以上のように、早寝は身体や心の健康に多くの効果があるといえそうです。  では、良好な睡眠が腰痛や関節痛に対して効果をもたらすことがあるのでしょうか。  現時点では、睡眠が直接的な効果を持つと断定することができませんが、下記に述べた内容から、十分な睡眠を取ることで身体の回復力を高めることができ、腰痛や関節痛の緩和につながると考えることができます。  睡眠不足は、心身のストレスをはじめ、身体の疲れがたまることで筋肉や関節の緊張を引き起こし、痛みを引き起こすことがあります。また、睡眠不足は痛みに対する感受性を高めるため、腰痛や関節痛が悪化する可能性があるといえそうです。  先述の通り、十分な睡眠を取ることで、身体や脳が回復し、疲れや緊張を解消することができれば、腰痛や関節痛の緩和につながることが期待されます。  また、睡眠中に分泌される成長ホルモンは、骨や筋肉の修復や再生に必要な役割を持っています。十分な睡眠を取ることで、成長ホルモンが分泌される量が増え、骨や筋肉の修復や再生が促進されるため、腰痛や関節痛の緩和につながる可能性があるかもしれません。  以上のことから、早寝は腰痛や関節痛に対して直接的な効果をもつことを主張することができませんが、良好な睡眠による身体の回復力によって、腰痛や関節痛...

カレーパウダーの効能

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  消化不良で苦しんでいる方、必見です。  前回のブログでは、 野菜スープの効能 について触れました。  今回は、前回のブログにも挙げた、スープ料理で大活躍のカレーパウダーの効能についてご紹介いたします。  カレーパウダーには、ターメリック、クルクミン、オレガノ、フェヌグリーク、ペッパー、フェネル、コリアンダー、生姜、カルダモン等が含まれています。  これらは漢方薬として用いられている他、パーキンソン病やアルツハイマー病の抑制を目的として導入されているケースがあるようです。  具体的な効能として、抗酸化作用、抗炎症作用、抗癌作用、消化促進作用、脳機能促進作用、肝臓機能の向上等があげられています。  実際に、カレーパウダーの摂取によって、関節症や炎症性腸炎が改善したことが報告されています( Yves Henrotin et al. 2014 )。  これを野菜スープに一振りすることで、更なる相乗効果が期待できると考えることができます。  近年注目されている「グルテンフリー」。小麦粉に含まれるグルテンは、一部の人にとって消化不良を引き起こす可能性があるといわれています。  カレーパウダーであれば、小麦粉が入っていないので、安心して摂取することができる食材となります。  長期にわたる痛みを抱えている方、まずはこういった食材を食生活に取り組んでみてはいかがでしょうか。