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EAA サプリメントで筋力アップが期待される? 最新の研究からわかったEAAの効果について Ⅱ

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  前回は、高齢者を対象とした EAA(必須アミノ酸) サプリメントの研究結果をご紹介しました。今回は、リハビリテーションを受けている高齢者 282 人を対象とした後ろ向き研究から明らかになった、EAA サプリメントと免疫機能に関する興味深い知見をご紹介します(Aquilani et al., 2021) 。 急性期後の高齢者における EAA サプリメントの効果  この研究では、手術や内科的疾患などの急性期後の高齢者において、EAA サプリメントの摂取が炎症軽減や免疫応答改善に効果を示す可能性が示唆されました。  研究対象者の半数以上が全身性炎症を抱えており、EAA サプリメント摂取群では、炎症を伴う患者群と感染症患者群の両方において、炎症マーカーである CRP の低下が認められました。  特に EAA サプリメント摂取群では、EAA サプリメントが末梢適応免疫応答の改善に関連し、自然免疫から適応免疫へのバランスが改善されたことが示されています。この効果は、感染症合併症を発症した患者にも見られました。  EAA は、免疫細胞(自然免疫・適応免疫細胞)の機能向上に不可欠です。EAA摂取により、細胞機能が向上し免疫バランスが改善され、炎症が軽減されると考察されていました。 得られた知見  この後ろ向き研究は、亜急性期の高齢者における EAA 補充が、炎症や感染症の条件下で血清 CRP レベルの低下、循環リンパ球の改善に関連していることを示唆しています。しかしこれは後ろ向き研究であるため、さらなる前向き研究や大規模な臨床試験による検証が必要になると考えられます。  この研究結果は、EAAサプリメントが筋力増強だけでなく、高齢者の免疫機能向上にも寄与する可能性を示唆しているという点で、非常に重要であることがわかります。  今回の研究は、EAA サプリメントが筋力アップだけでなく、高齢者の免疫機能改善、慢性的な痛み軽減にも貢献する可能性を示唆したものでした。  当店のお客様のように、痛みを伴う症状を抱えている方々にとって、EAA 摂取は筋膜リリースの効果をサポートする可能性があり、栄養指導の一環としてアミノ酸摂取の重要性を改めて認識する必要があると考えられます。  今回はあくまでサプリメントによる効果ですが、バランスの良い食事と適切な運動と組み合わせることで、より効果...

EAA サプリメントで筋力アップが期待される? 最新の研究からわかったEAAの効果について

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   私たちの筋肉は、絶え間なく合成と分解を繰り返しています。このバランスが崩れ、分解が合成を上回ると、筋肉量は減少し、筋力は低下してしまいます。  これは、状況によっては、筋力トレーニングを行っても、かえって筋力低下を招く可能性があるという意味に解釈できます。  そして、この筋肉の分解を促進する大きな要因の一つが 「アミノ酸不足」 と言われています。筋肉の約 20%はアミノ酸で構成されており、アミノ酸が不足すると、体は筋肉を分解して必要なアミノ酸を確保しようとします。まさに、 筋肉が自分自身を「食べてしまう」状態です 。  そこで注目したいのが、EAA(必須アミノ酸)サプリメントです。EAA は、 体内で合成できない 9 種類のアミノ酸の総称で、筋肉の合成と修復に不可欠な成分です。  EAA を補給することで、アミノ酸不足を防ぎ、筋肉の分解を抑え、筋力アップをサポートすることが期待できます。最近では、EAA を摂取することで、運動をしなくても筋力の低下を予防する可能性を示唆した研究結果も出てきています。  今回は、その研究結果を紹介させて頂きます。  この研究論文(Negro et al., 2019) では、EAA を含むマルチ成分サプリメントの効果について、 60 歳以上の高齢者を対象に検証されました。この研究では、EAA に加え、クレアチン、ビタミン D、そして Muscle Restore Complex®(ALA、CoQ10、レスベラトロール)が含まれたサプリメントを 12 週間摂取させ、その効果を検討するものでした。  結果は以下の通りです。 筋肉量の増加:   プラセボ群と比較して、サプリメント摂取群では筋肉量が有意に増加しました。この増加は、年齢による筋肉量の減少を 1 年以上相殺するほどの効果を示しています。 筋力の向上:   最大随意収縮力においても、サプリメント摂取群で有意な向上が認められました。これは、日常生活における動作能力の向上にも繋がる重要な結果だといえます。 筋パワーの増加:   筋パワーについても、サプリメント摂取群で有意な増加が確認されました。これは、より力強く、素早く動くための能力向上を示しています。 まとめ:  研究結果を踏まえると、EAA サプリメントは、筋肉量、筋力、筋パワーの向上に効果的なサ...

論文掲載のお知らせ! Literature Review on Professional Identity of Occupational Therapists in Japan -Through scoping review-

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 この度、当店スタッフが執筆した論文「Literature Review on Professional Identity of Occupational Therapists in Japan -Through scoping review-」が受理されました!  この研究は、日本の作業療法士のアイデンティティに関する文献の研究を行ったものです。  アイデンティティとは、単なる社会的役割や好悪、性別、年齢によるものではなく、それらが複雑に絡み合い、時間や状況によって常に変化する流動的な存在と言われています。  人は、アイデンティティを確立するために様々なものを消費する、という エックハルト・トール の指摘は、私たちが「概念化された現実」に囚われやすいことを示唆しています。  しかしながら、真のアイデンティティは、そのような表面的な満足感ではなく、より深い自己理解と自己受容の上に成り立つのではないかと考えられます。例えば、高級車や高級腕時計、流行りの服を消費し、モノを通じて自分自身を発見しようとする行為は、真の自己探求とは異なる、一時的な満足感に過ぎない可能性があると指摘されています。  当店は作業療法士が在籍していますが、作業療法士という職種は多種多様であり、その多様性ゆえにアイデンティティの揺らぎを感じやすい職業であると言及されています。  近隣領域である看護師や理学療法士との役割がオーバーラップする部分もあり、作業療法士の独立性、専門性が曖昧になり、近隣職種との役割重複による専門性の曖昧化、それに伴うモチベーション低下、ひいてはやりがいの喪失が危惧されています。  それこそ、多様なニーズへの対応に追われ、自己実現感が欠如してしまう点も否めません。  今回採択された論文は、国内における作業療法士のアイデンティティについて、スコピングレビューという手法を用いた文献研究を行ったものです。繰り返しますが、アイデンティティは職業だけでなく、個人の価値観、経験、人間関係など、多様な要素が複雑に絡み合って形成されるものと考えられています。  この研究を通じて、作業療法士という職業は、特に対象者や他職種との相互作用することで、個々の作業療法士のアイデンティティを形作っていると考えられました。  ただし、この研究だけでは作業療法士のアイデンティティについて決定的な結論を導くには...

超音波が明らかにした筋膜の視点:皮下組織と筋肉の「独立運動」

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 体の深部、特に筋膜がどのように動いているかを想像することは決して簡単ではありませんでした。   超音波エコーを用いた最新の研究によって、筋膜の新たな側面について明らかになっている研究がありました。 筋膜リリースの評価  長年、筋膜リリースは経験則や感覚に頼る部分がありました。  過去のブログで挙げたように、近年、超音波検査技術の進歩により、筋膜の動きをリアルタイムで可視化できるようになっています。  今回紹介する研究では、超音波エコーを用いて、腰部の皮下組織と多裂筋(腰部の深い筋肉)の動きを詳細に分析しました。 新たな視点:独立して動く皮下組織と筋肉  この研究によると、超音波画像によって、皮下組織と多裂筋が、必ずしも一体となって動いているわけではないことが示されています。  特に、特定の介入(例えば、ローラーマッサージ)を行うと、皮下組織と多裂筋の動きがより独立して動くようになることが確認されました。   これは、組織間の滑走が改善され、筋膜の非運動性が軽減されたことを示唆しています。  つまり、組織の独立した動きがない=組織間の滑走がないということは、動きが悪くなっているという理解ができますね。両者の動きが独立することが、より良い状態であることが示唆されています。 独立した動きがもたらす効果  皮下組織と筋肉が独立して動くようになることで、何が変わるのでしょうか? 研究では、腰部の柔軟性や体幹筋力の向上といった効果が確認されています。  これは、筋膜の滑走性の向上によって、筋肉がより効率的に機能できるようになったためと考えられます。 図:下記論文から引用  超音波検査技術の進歩によって、私たちは筋膜の動きをより深く理解できるようになりました。  エコーの見方として、皮下組織と筋肉の「独立した動き」という視点を取り入れることで、筋膜リリースの効果を正しく判定することができそうですね。 引用文献: Nakai Y, Oe K, Matsuno R, Kiyama R, Kawada M, Takeshita Y, Miyazaki T, Araki S. Effect of Self-Myofascial Release of the Lower Back on Myofascial Gliding, Lumbar Flexibility, and Abd...

骨粗鬆症と体幹筋の関係性:超音波検査による新たな知見

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 高齢化社会において増加の一途を辿る骨粗鬆症。  骨の痛みや骨折のリスクを高めるこの病気に対し、新たな視点が示された論文を紹介します。  この研究では、超音波検査を用いて、骨粗鬆症の女性における体幹の筋肉の状態を詳しく調べておりました。 研究方法:  20 代から 80 代までの女性 91 名を対象に、超音波検査で腰部と腹部の筋肉を調べました。参加者は、20 代の健康な女性(対照群)と、50 代、60 代、70 代以上の骨粗鬆症患者(3 つのグループに分けられました)に分けられました。 研究結果:  骨粗鬆症患者では、健康な女性と比べて、体幹筋の厚さが薄く、エコー強度が高くなっていました。エコー強度が高いということは、脂肪が筋肉に浸潤している可能性を示唆しています。  骨粗鬆症患者のグループ間では、年齢が高いほどコア筋の厚さが薄くなっていました。  超音波画像では、健康な女性の筋肉はふっくらとしていましたが、骨粗鬆症患者では筋肉が痩せて見え、エコー強度が高く、筋肉と筋膜の境界が不明瞭になっていました。  腹直筋や腹横筋では、波状の線状エコーが見られ、筋肉の緊張が低下していることも分かりました。 この研究が示唆すること:  この研究は、骨粗鬆症の女性では体幹筋の質が低下しており、超音波検査でその状態を評価できることを示しています。重力が筋肉を通して骨に伝達されることで、骨を刺激し、骨形成を促進すると考えられていることから、体幹筋の強化は、骨粗鬆症の予防や治療に重要な役割を果たす可能性があります。    とても興味深い研究ですね。当店においても、体幹筋である腹横筋の強化がどのような効果をもたらすのか、 心身の観点から検証しております 。 骨粗鬆症患者の体幹筋エコー画像(下記論文から引用) 引用文献: Luo Y, Yue W, Li Z, Chen L, Wang P, Sun K. An initial study of core muscles using ultrasound in postmenopausal women with osteoporosis. Ann Palliat Med. 2022 Apr;11(4):1482-1490. doi: 10.21037/apm-22-314. PMID: 35523756.

論文掲載のお知らせ!The new potential and prospects of leisure activities of older adults individuals during the COVID-19 pandemic in Japan on health-span: From the perspective of a scoping review

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 この度、当店スタッフが執筆した論文「The new potential and prospects of leisure activities of older adults individuals during the COVID-19 pandemic in Japan on health-span: From the perspective of a scoping review」(邦題:COVID-19 パンデミック下における日本の高齢者の余暇活動と健康寿命:スコ-ピングレビュ-による考察)が、Studies in Science and Technologyに掲載されました!  高齢化社会が進む中、健康寿命の延伸は重要な課題となっています。本論文では、COVID-19 パンデミックによる社会距離化が、75 歳以上の高齢者の余暇活動にどのような変化をもたらしたかについて、スコピングレビューを用いて分析したものになります。  研究の結果、社会距離化の影響を受けにくかった余暇活動として、ゲーム、体操、スマートフォン等を用いたビデオ通話、メールなどが挙げられました。これらの活動は、デジタル技術といった新たな生活様式の一部となり、より多くの高齢者の健康増進に繋がる可能性が示唆されています。  さらに、本論文では、COVID-19 パンデミック下における高齢者の余暇活動に関する研究の不足や、高齢者の属性を考慮した分析の重要性も指摘しています。  まだまだ課題は山積みではありますが、この研究成果は、高齢者向けの健康度の指標となりうる、重要な知見です。  引き続き今後の研究活動にもご期待ください。 論文URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/sst/13/2/13_115/_article/-char/ja

レモン水の効能について

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  最近、スーパーでは有機栽培のレモンから抽出したレモン汁が販売されるようになり、価格も手頃なものが増えています。  以下には、レモン汁に期待される効能について述べられています。 ビタミンCの補給: レモンには豊富なビタミンCが含まれています。ビタミンCは免疫機能のサポートや抗酸化作用があり、風邪の予防や健康な肌を維持するのに役立つとされています。 代謝の活性化: ビタミンCやクエン酸、ポリフェノールなどが含まれており、これらが代謝を活性化させる助けになるとされています。特にクエン酸は体内の酸化ストレスを軽減し、新陳代謝を促進する役割があります。 消化の改善: レモン水に含まれる酸が、消化酵素の分泌を促進し、消化を助ける可能性があります。また、レモンの風味が食欲を刺激し、食事の前に摂取することで食欲増進に寄与するとされています。 デトックス効果: クエン酸が肝臓のデトックスプロセスをサポートするとされ、レモン水は身体の浄化や不要物質の排出を助ける可能性があります。 皮膚の健康: ビタミンCはコラーゲンの生成を促進し、皮膚の健康や美容に寄与するとされています。レモン水の摂取が健康的な肌を維持するのに役立つとされています。 アルカリ性のバランス: レモンは酸味がありますが、体内に摂取されるとアルカリ性の影響をもたらすとされています。アルカリ性のバランスを整え、酸化ストレスを軽減する可能性があります。  以上の点から、レモン水には様々な効果があり、特にアンチエイジングや免疫の強化が期待されそうです。  人によっては、胃に合わない方もいると言われていますので、そのような方は空腹を避け、食後に摂取するとよいかもしれません。   しかし、どの食材もそうですが、たくさん摂取したら良いというものではなく、あくまでもバランスの良い食事に心がけることが大切だと言われています。