痙性について
痙性について論じた文献を読む機会がありましたので、この内容について紹介させていただきます。
痙性は上位運動ニューロン障害によって引き起こされると言われておりますが、実際には複雑でさまざまな要因が絡み合っているようです。
まず痙性は速度に依存するといわれます。しかしこの報告によると、伸張を維持した状態においても、筋が収縮を続けることがある、とのことでした(下記図参照)。
痙性は一般に動的なもので発生すると考えられていましたが、静的な状態でも等尺性に緊張しているようですね。つまり、動かず静止している状態なのに筋肉が活動し続けている、ということになります。
一方、痙性は、速度依存とは別に長さに依存する特徴を有しています。
ある程度筋の長さがつくられると、痙縮による抵抗が減少します。しかしながら、特に上肢の屈筋や、下腿三頭筋の長さを求めた場合は、むしろ痙縮が強くなる傾向にあることが明らかにされています。
なるほどたしかに臨床では、頻繁に経験します。
痙性のもう一つの原因として、筋の短縮や運動の減少によるものが挙げられました。
このことは、上位運動ニューロンの問題に加え、脊髄レベルで痙性を発生させてしまう可能性を示唆しています。
だから今回に挙げたような速度依存性、長さ依存性の問題が生じる可能性があると考えられました。
この論文によると、このような痙性には、セラピストの徒手誘導・スプリントによる長時間のストレッチ、そして積極的に運動することが重要です。
臨床では、少しでも気を緩むと痙性に引っ張られてしまうことがあります。
慎重に・丁寧に関わり、当該筋の持続的な伸長を加えていくこと、そして固定する部位をつくらないよう、積極的に動いていく機会を作っていくことが大切だと思いました。
この論文とは別に、私はさまざまな刺激で痙性が弱まることを経験してきました。
その刺激とは何か、方法は?
その方法と効果は人それぞれでした。つまり、決まりきった方法はいまだかつて見いだせていません。
私のセンスの低さも十分考えられますが、痙性とはとても奥深く、その方の特徴を踏まえ、いろんな観点から模索していくことが解決の糸口になるのではないかと改めて考えるようになりました。
心理、睡眠、痛み、栄養等・・・
今回の知見に加え、その方の痙性が落ち着くことは何か、それを見逃さずに注意深くアプローチしていきたいと思います。
そのためには、対象者の皆さんから普段何をどのように過ごしていらっしゃるのか、多くの情報を収集して分析していくことも大切ですね。
ある部位を60度の角度で静止しても、筋活動が持続している。
引用文献
Trompetto, C., Marinelli, L., Mori, L., Pelosin, E., Currà, A., Molfetta, L., & Abbruzzese, G. (2014). Pathophysiology of spasticity: implications for neurorehabilitation. BioMed research international, 2014, 354906. https://doi.org/10.1155/2014/354906
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